この記事の結論
- ファスナーには樹脂・コイル・金属の3タイプがあり、初心者にはまず扱いやすい樹脂(ビスロン)ファスナーがおすすめ
- 片開きと両開きの違いはスライダーが1個か2個かで、ポーチや小物入れには片開きで十分
- 位置決めで一番失敗しやすいのは、ファスナーの長さと開口部の長さを事前にきちんと合わせていないこと
- 縫い付けはクリップやゴムのりでの仮止め→返し縫いでしっかり固定するのが基本の流れ
ポーチや小物入れを作ろうとしたとき、最後の関門になりやすいのがファスナー付けです。
ファスナーは種類が多く、どれを選べばいいのか迷いやすいうえに、位置がずれると開閉しづらい仕上がりになってしまいます。
この記事では、ファスナーの種類の違いから、必要な道具、基本の付け方、初心者がつまずきやすいポイントまで順番に整理します。
簡単に作れる作品5選の記事でも触れたポーチ作りに挑戦したい方は、ぜひ参考にしてください。
ファスナー付きの革小物を作る前に知っておきたい基礎知識
ファスナーを選ぶときにまず押さえておきたいのが、「素材の種類」と「開き方の種類」の2つです。
ファスナーの種類、樹脂・コイル・金属の違い
ファスナーの務歯(むし、開閉する歯の部分)の素材によって、大きく3つのタイプに分かれます。
樹脂ファスナー(ビスロンファスナー)は、務歯が1つずつ独立したプラスチック製で、丈夫で存在感のある見た目が特徴です。
コイルファスナーは務歯がらせん状の樹脂でできており、しなやかで曲面にもなじみやすいタイプです。
金属ファスナーは真鍮やアルミ製の務歯を使ったクラシックな見た目のタイプで、革小物との相性も良いですが、他の2種類に比べるとやや重みがあります。
レザークラフトの小物では、丈夫さと縫い付けやすさのバランスが良い樹脂ファスナーが最初の1本として選ばれることが多いです。
| 種類 | 特徴 | 向いている作品 |
|---|---|---|
| 樹脂ファスナー(ビスロン) | 丈夫で存在感のある見た目、縫い付けやすい | ポーチ、小物入れ全般 |
| コイルファスナー | しなやかで曲面になじみやすい | マチのある袋物、丸みのある形 |
| 金属ファスナー | クラシックな見た目、他2種よりやや重い | 財布、見た目を重視したい小物 |

片開きと両開き、何が違うのか
ファスナーにはもう1つ、「片開き」と「両開き」という開き方の違いもあります。
片開きは、務歯の下端に下止めが付いていて、スライダーが根元より下に外れない構造です。
両開きはスライダーが2個付いていて、務歯の両端どちらからでも開け閉めできる構造です。
なお、務歯を完全に左右へ分離できるタイプは「オープンファスナー」と呼ばれる別の仕様で、ジャケットの前立てなどに使われるものです。
ポーチや小物入れのように、袋の口を開け閉めするだけの用途であれば、片開きで十分です。
ただし、マチのある大きめのポーチやトラベルポーチのように、開口部を大きく開いて中身を見渡したい作品では、両開きを選ぶこともあります。
迷ったら「樹脂(ビスロン)ファスナーの片開き」を選んでおけば、ポーチや小物入れ作りで困ることはほとんどありません。
ファスナー付けに必要な道具
ファスナー付けは、手縫いでも家庭用ミシンでも行うことができます。
手縫いで付ける場合の道具
手縫いでファスナーを付ける場合は、道具一覧の記事で紹介した基本の道具に加えて、ファスナーを仮止めするためのソーイングクリップがあると作業がぐっとやりやすくなります。
革とファスナーは厚みが違うため、洗濯ばさみのようなクリップで挟んで固定しながら位置を確認できると、ズレを防ぎやすくなります。
縫い付け自体は、菱目打ちの使い方の記事とサドルステッチの記事で紹介した手順の応用になります。
家庭用ミシンを使う場合のポイント
家庭用ミシンでファスナーを付ける場合は、「片押え(かたおさえ)」と呼ばれる、押えの片側だけがファスナーの務歯を避けて縫えるパーツが必要です。

薄手の革であれば家庭用ミシンでも対応できますが、厚みのある革を何枚も重ねて縫う場合は、無理をせず手縫いに切り替えた方がきれいに仕上がります。
工業用のレザーミシンについては専門店や職人向けの領域になるため、この記事では扱いません。
そもそも手縫いとミシンのどちらを選ぶべきか迷っている場合は、レザークラフトは手縫いとミシン、どちらがいい?で判断の目安を整理しています。
ファスナーの付け方、基本の手順
ここからは、ポーチのようなシンプルな小物を想定した、ファスナー付けの基本の流れを説明します。
位置決めと仮止め
まず、革の開口部の長さと、使うファスナーの長さ(務歯の部分)を実際に並べて確認します。
ファスナーの表(スライダーの引き手が見える面)を革の表面に合わせ、ファスナーテープの耳(生地部分)を革の裏側に5mmほど重ねるのを目安に位置を決めます。
務歯の中心が開口部の端から2〜3mm内側にくるくらいの重なりにすると、閉じたときに務歯がちょうど隠れて見た目もすっきりします。
位置が決まったら、クリップかゴムのりで仮止めをしてから、本縫いに進みます。
クリップを使う場合は、まず両端と中央の3点を先に留め、そのあいだを1〜2cm間隔で追加していくと、革やテープの伸び縮みでズレるのを防ぎやすくなります。
ゴムのりを使う場合の乾燥時間の目安は、接着剤の記事で紹介した通りです。
縫い付け(基本の縫い方)
仮止めができたら、ファスナーテープの耳から2mmほどの位置に縫い線を決め、菱目打ちで穴をあけていきます。
縫い線が務歯に近すぎるとスライダーの引き手が引っかかりやすくなり、離れすぎるとテープがめくれやすくなるため、2mm前後を目安にすると安定します。
菱目のピッチは、菱目打ちの使い方の記事で紹介した4mm前後のものを使うと、これまでの作品作りと同じ力加減の感覚をそのまま活かせます。
スライダーの手前残り3cmほどまで縫い進めたら一度手を止め、スライダーを縫い進める方向と反対側までずらしてから作業を再開すると、針がスライダーに引っかからずスムーズです。

縫い終わりの始末
開口部の端まで縫い終えたら、余ったファスナーテープを開口部の端から10〜15mmほど残した位置でカットします。
カットした切り口はそのままだとスライダーが抜けてしまうため、切り口側に上止めを付けて、スライダーの抜け止めにします。
金属ファスナーなら、止めたい位置から先の務歯をニッパーで数個外してテープを出し、そこに上止め金具をペンチで挟んで固定するのが一般的な方法です。
樹脂(ビスロン)ファスナーも、務歯を外して新しい上止めを付ける方法が紹介されているので、使うファスナーの種類に合った上止めを用意しておきましょう。
初心者がつまずきやすいポイントとその対策
ファスナー付けで実際によく起きるつまずきポイントと、その対策をまとめました。
ファスナーの長さが開口部と合わない
もっとも多い失敗が、型紙の開口部の長さとファスナーの長さを、購入前や裁断前に確認していなかったというケースです。
ファスナーは市販の既製サイズから選ぶことが多いため、先に手持ちのファスナーの長さを測り、それに合わせて型紙の開口部を決める方が失敗しにくくなります。
「作りたいサイズに合わせてファスナーを探す」のではなく「手元にあるファスナーの長さに合わせて型紙を決める」順番にすると、長さのミスマッチをほぼ防げます。
革が突っ張る、波打つ
ファスナーテープと革を無理に引っ張りながら縫うと、縫い終わったあとに生地が波打ってしまうことがあります。
原因の多くは、仮止めの段階でファスナーと革の端を均等に合わせられていないことです。
クリップで数か所固定してから、端から端まで長さが揃っているか一度指でなぞって確認する一手間が、仕上がりを大きく左右します。
縫い目が曲がる、スライダー付近で詰まる
スライダーの近くで針が引っかかったり、無理に縫い進めて縫い目が曲がったりすることもよくあります。
この場合は焦らず一度手を止めて、スライダーを縫いたい位置から遠ざけてから作業を再開すると、詰まりを防げます。

まとめ
ファスナー付けは、革小物作りの中でも特に「位置決め」がものを言う工程です。
最初の1本には樹脂ファスナーの片開きを選び、開口部の長さをファスナーに合わせて決めておくだけで、多くの失敗を避けられます。
ここで紹介した基本の手順は、ポーチだけでなく、スマホケースの開閉部にファスナーを取り入れるような応用にもそのまま活かせます。
最初は端切れの革で練習してから本番の作品に取り掛かると、感覚をつかみやすくなります。


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